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最高裁判所第二小法廷 昭和40年(オ)646号 判決

主文

なし

理由

上告代理人八代俊雄の上告理由について。

原判決が、本件建物につき訴外宮崎と上告人の間に締結されたのは、代物弁済の予約であるのに、登記簿上は、仮登記の原因として、停止条件付代物弁済契約がなされた如く記載されていることを認定したうえで、かかる登記原因についての記載の誤りは仮登記自体の効力を害するものではなく、現実に締結された代物弁済の予約に基づく仮登記として、後日なされる本登記の順位を保全する効力を有するものと解するのが相当であるとし、かかる仮登記権利者は、前記登記原因につき更正登記を求めるまでもなく、右仮登記に基づいて仮登記義務者に対し本登記手続を請求できると判断していることは、論旨のいうとおりである。

しかし、本件の如く所有権移転請求権保全の仮登記にあつても、それは本登記の順位を保全することを目的としてなされるものであつて、仮登記の原因たる権利関係自体の公示にその目的があるのではないから、仮登記された権利関係と実質上の権利関係との間に若干の喰い違いがあつても、当該仮登記が特定の不動産の所有権移転請求権を保全するための仮登記として同一性を害するものと認められない限り直ちにこれを無効とすべきではないと解すべきことは、既に当裁判所の判例(昭和三四年(オ)第一八三号、同三七年七月六日第二小法廷判決、民集一六巻七号一四五二頁参照)であつて、これと同趣旨の原審判断は、すべて是認できる。

論旨は、右の場合更正登記手続を経由し、実体関係と登記面との不一致が是正されたのち、はじめて右仮登記に基づく本登記手続の請求ができるものであると主張するが、独自の見解にすぎず。採用できない。

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